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深掘り

福島第一原発1号機の爆発音は「抜けたなぁみたいな軽い音」

福島第一原発の事故現場回想(2)

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 大手電機設備会社の社員として長年にわたって東京電力の原発で働いてきた彼は、2011年3月11日から15日にかけて事態が悪化しつつある福島第一原発の現場で3回にわたる爆発に遭遇した。2012年2月、彼は、福島県いわき市内で、編集者の久田将義氏と朝日新聞記者の奥山俊宏のインタビューを受け、1年弱前の記憶をたどった。記事にしない前提のインタビューだったが、このほど、事故発生10年を前にその前提を解除。氏名や勤務先の会社名を伏せた上でインタビューの内容を公にすることに彼は同意した。それを4回に分けて「法と経済のジャーナル AJ」で連載する。その第2回の本稿では、2011年3月12日午後、福島第一原発構内の駐車場に着いたばかりのバスの車中で1号機の爆発に遭遇した際の記憶をたどる。

 ■12日午後、1号機爆発に遭遇

拡大福島第一原発1号機=2011年3月15日に東電社員が撮影し、同社が2013年2月1日に公表した写真
 2011年3月12日午後3時36分、1号機の原子炉建屋が爆発した。

 奥山:1号機が12日午後に爆発しましたよね。そのときはどちらにいらしたんですか?

 マサ:12日の朝イチにやって、サーベイ受けてきて、「あなた方はちょっとこっちに行ってください」って言われて。で、汚染の度合いが、もうバックが上がりすぎて構内では計れないので。ぼくらだけじゃなくてけっこう何人もいたんですよ、ほかの業者の人たちも。10人、15人ぐらいいたのかな。で、「みなさんは申し訳ないですけど、バックの低いところまで行って、身体サーベイ、もう1回やりますから」って言われて、12日の午前中のうちにバスに乗せられて、川内村まで行ったんです。バスに乗って。で、「ここでもう1回サーベイしましょう」っていうことで、川内村まで行って、バスから降ろされて。ひとりぐらい降りたのかな?、それで計ったんだけど、やっぱダメで。

 周囲の環境の放射線量が高いと、その中では、その人の汚染の度合いを測定できなくなる。福島第一原発構内はすでに線量が上がっていたため、個別の汚染の測定が難しくなっていた。「きれいになったかのサーベイがここじゃできない」と彼は言い渡され、バスに乗せられた。そして、福島第一原発から内陸に向かって20キロほど離れた川内村に線量の低い場所を探しにいくことになった。バスには20人ほどが乗っていたという。

 久田:ダメっていうのは高いってことですか?

 マサ:やっぱ高い。汚染してる。

 奥山:川内村のバックグラウンドはまだ高くないんですよね。

 マサ:バックグラウンドは高くないですけど、こっちがダメで。「汚染してますね」っていうことで。構内にいると判断ができないものを、バックグラウンドが低いところまで行って判断できるようになったっていうことで、「ああ、やっぱりダメだね」っていう。

 久田:川内村はまだ低かったんですか?

 マサ:そのときはまだ大丈夫だったんです。そのときにはそのバスには東電の保安の放射線管理のほうの人がひとりついて、バスの中に15~16人。業者の人もいるし、東京電力の人もいるしっていう状況で川内村まで行って、「やっぱダメですね」って、1Fにもう1回戻ってきて、バスから降りたときにドーン。

 奥山:1号機が?

 マサ:免震棟の前の駐車場で。ぼくはまだ降りなかったんですけど、何人か降りたときにドーンって来て。で、座席のあいだにこう隠れて、窓から見たときに、もう窓の外じゅうはほこりと、あと保温材とかがブワーッとなってて。

 久田:そのときはどういう気持ちだったですか?

 マサ:そのときは何があったかわからなかったんで、「爆発?」みたいな感じですね。

 久田:爆発するとかは想定してたんですか?

 マサ:いや、全然してないです。ただ、そのときに中にいた東電の社員が、「ブローアウト!」って言ったんで、ああそうか、と。「ブローアウトだ」って言ったんで、ああ、そうかぁ、と。ブローアウトは知ってたんで。そういうことなんだ。

 奥山:ブローアウトってなんですか?

 マサ:ブローアウトっていうのは、原子炉の建物、RPV(原子炉圧力容器)の上の原子炉の建物の圧力が上がりすぎちゃったときに、逃がすために自動で開いちゃうんです。爆発して。そういうふうになってるんで。

 奥山:パネルが外れるっていう。

 マサ:そうですそうです、あれブローアウト。その状況だったんで。東電の一人が「ブローアウト!」って言ったときに、「そうなんだ、これ」っていう感じ。で、そのまますぐバスの中にもう1回乗り込んで。

 奥山:ブローアウトって聞いて、それは安心する話なんですか?

 マサ:そうですね、そのまま連続爆発が起こるわけじゃないし。そういうこと(連続爆発が起きるような事態)じゃないんで。圧力1回逃がしちゃってるんで。

 奥山:そこでパッと理解したわけですか。

 マサ:とりあえずは。とりあえずは。でも、その保温材とかガレキとかホコリがブワーッと舞ってるのは、これ全部汚染してるはずだから、今ここにいちゃいけない、ということで、そこでも、だれかが叫んだんですよね、「バス出せ! バス出せ!」って言って、だれかが叫んで。とりあえずバスの運転手さんも、「うわ、ここにいちゃいけないんだ」っていうふうになって、ブワーッとバスを構外のほうに1Fから外へ。そのときには東電の保安の人も乗ってたし、みんなまた乗ってたんで、東電の人同士が話をして、「どうするどうする?」みたいな話をしてるのを、ぼくらは聞こえないですけど、そこで話をしてて。そしたらその人が、「これからとりあえず2F(福島第二原発)に行きます。いったん避難のために2Fに行きます」っていうことで、2Fまで向かって。

 奥山:それは放射線管理の人ですよね?

 マサ:そうです。

 奥山:爆発の音はどんな?

 マサ:音はわりと軽いんですよね。パカーンみたいな、あんまり重い音じゃないんですよ。要はそれだけもろくできてるんで。抜けてもいいようにできてるんで。ホントに強固なものがそれ以上のものに壊されるみたいな感じではない感じなんで。ほんとに「抜けたなぁ」みたいな、いう感じですね。

 奥山:ポコーン、みたいな、パカーン、という感じなんですね。

 マサ:そうです。それのすごい大きい音。

 東電の当時の記者への説明によれば、1号機の原子炉建屋の最上階は鉄骨に鉄板を張り付けた構造に

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
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