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調査・検証

検証・ロッキード事件

1-4) カネを受け取った高官はだれ? 公務員の名前は暴露されず

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第1部では、疑惑が発覚した当時に自民党の幹事長を務め、のちに首相になった中曽根康弘のメッセージとして米政府ホワイトハウスに届いたある言葉に焦点をあてる。その第4回。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略します。

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年1月号に掲載された原稿に加筆したものです。
 

 「日本政界へのカネ」は暴露されたが、そこには、政治家や公務員の名前は一切なかった。ロッキードのカネを受け取った政治家は一体だれなのか? それが世の中の関心の焦点となった。

 米上院の多国籍企業小委員会は2月6日、ロッキードの副会長アーチボルト・コーチャンを尋問し、「200万ドルは丸紅を経由して日本政府当局者(複数)に届いた」と証言させた。しかし、肝心の日本政府当局者の名前はそこでも伏せられた。大物フィクサーとして知る人には知られていた児玉や小佐野賢治の名前が出ても、公務員の名前は出ない。多国籍企業小委員会は、ロッキードや国務省の意向に従い、人権に配慮して、個別の公務員名を表に出さないのを方針としていたからだ。

 収まらないのは日本国内だった。疑惑を突きつけられながら、その核心については、はぐらかされた、蛇の生殺しにも似た状況だった。児玉は中曽根の、小佐野は田中の、それぞれの知人として知られていたから、疑いのまなざしはそれら政治家に向けられた。しかし、裏付けはない。

 答えを求めて記者や与野党の政治家がワシントンに向けて次々と旅だった。米国の駐日大使館の分析によれば注6、野党の議員らは自民党にダメージを与える情報を求め、自民党の議員らはワシントンにある情報の程度を測ろうとした。日本政府からも、東京・霞が関の外務省キャリア官僚の中ではナンバー2の地位にある外務審議官・有田圭輔が訪米することになった。

 2月7日、土曜日、国務省は、前日にあった多国籍企業小委員会の公聴会の内容の要旨を伝える公電を東京の駐日大使館に送り、その公電の中で、次のような見方を示した注7

拡大国務省が1976年2月7日に駐日大使館に送った公電の一部

 「小委員会は、外国政府公務員の名前を公聴会の場には出さないという基本原則を維持しているが、ヨーロッパの政治家の名前はすでにリークされ始めている。日本の記者や政治家が議会に激しい取材攻勢をかけており、ロッキードの日本での活動に関するさらなる詳細が表に出るのは間違いない」 (次回につづく

 ▽連載「秘密解除・ロッキード事件」目次
 (1) ホワイトハウスに届いたメッセージ「MOMIKESU」
 (2) 米上院の暴露が朝刊に突っ込まれる
 (3) 発覚翌日、米国務省日本部長と中曽根幹事長が接触
 (4) カネを受け取った高官はだれ? 公務員の名前は暴露されず

 注6: 09 FEB 1976, 1976TOKYO01966, “JAPANESE POLITICAL VISITORS TO

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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