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調査・検証

検証・ロッキード事件

1-10) 駐日大使館の分析、アメリカの国益は?

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第1部では、疑惑が発覚した当時に自民党の幹事長を務め、のちに首相になった中曽根康弘のメッセージとして米政府ホワイトハウスに届いたある言葉に焦点をあてる。その第10回。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略します。

  ▽この連載の   目次とリンク

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年1月号に掲載された原稿に加筆したものです。

 

 中曽根の言葉として寄せられたメッセージの中身について、米政府の駐日大使館は詳細な分析を試みている。

 「今後の展開に関する中曽根の推定は我々にはオーバーに思われる。さらに、三木の判断についての中曽根の報告は、我々の理解する三木の立場と合致しない。ロッキード事件への中曽根個人の関与の可能性がはっきりしないことにも注意が払われるべきだ」

 三木は「真相解明」をみずからの責任であると公言しており、駐日大使館としても、それを三木の真意であると一応は理解していたのだろう。「中曽根の報告」はそれと矛盾していた。だから、駐日大使館としては、中曽根が自分の都合に合うように三木の話をでっち上げた可能性を考慮に入れているのだ。

 一方で、「にもかかわらず」と接続詞を置いた上で、公電は「彼の我々へのアプローチは、より直接的ではない証拠を根拠に大使館が抱いている印象に一致している」と続けている。

 「すなわち、合衆国政府に対する日本政府の公式の陳情にもかかわらず、自民党のリーダーの多数(三木首相自身を含む可能性あり)は、合衆国政府がこれ以上の有害な情報を公表しないことを希望している。とりわけ、関与を疑われる政府当局者の名前を開示しないことを希望している。たしかに、当地での大衆の傾向は、三木と日本政府が、すべての情報開示を合衆国政府に要求する強い表向きのポーズをとること以外はほとんど何もできないような状況にある。この大衆の傾向、それに加えて、実体のために形を代理させようとする日本特有の傾向(ローカルな強い好み)を考えると、日本政府の公式の要請を額面通りに受け取るべきではないという結論を導くことができるかもしれない。何人かの個々の自民党議員や青嵐会のような少数派グループがこの利益を共有しているとは言えないが、しかしながら、ほとんどの自民党リーダーと議員らは、さらなる有害な暴露がなければ、政府や党への深刻なダメージなしで状況を乗り越えられると感じているというのが我々の印象だ。チャーチ小委員会やSECなどに提供された情報の正確な内容を知らないなかで、彼らは、さらなる暴露の結果がどんなものなのか確信を持てないでいる。しかしながら、田中と彼の

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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