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調査・検証

検証・ロッキード事件

1-11) 表では「一切の資料の提供を」と米政府に要請

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第1部では、疑惑が発覚した当時に自民党の幹事長を務め、のちに首相になった中曽根康弘のメッセージとして米政府ホワイトハウスに届いたある言葉に焦点をあてる。その第11回。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略します。

  ▽この連載の   目次とリンク

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年1月号に掲載された原稿に加筆したものです。

 

 1976年2月当時、日本中が「高官」の名前を知りたがっていた。ロッキードからカネをもらった当の政治家とその取り巻きを除けば、ほとんどすべての日本人が真相を知りたかったと言って過言ではないだろう。三木首相の率いる政府の建前もそうだったし、自民党も表向きはそれに異議を唱えなかった。中曽根自身、2月20日の朝日新聞朝刊に掲載されたインタビューの中で「政府・与党は一体となって徹底的に究明する覚悟だ」と答え注16、21日に熊本市内で開かれた青年懇話会では「米側に全資料の提供を重ねて要請してゆく」と述べた注17

 衆参両院は2月23日、自民、社会、共産、公明、民社の5党が共同で「ロッキード問題に関する決議」を提案し、全会一致で可決した。

 「ロッキード問題のわが国に関するいわゆる政府高官名を含む一切の未公開資料を提供されるよう米国上院及び米国政府に特段の配慮を要請する。本院は、本問題に関するすべての疑惑を解明することが、真の日米友好にとっても重要であり、国民の要望にこたえる道であると確信する。政府においても、右の趣旨を体し、特使の派遣等を含め本問題の解明のため万全の措置を講ずべきである」

 これを受けて、三木は翌24日、米大統領のフォードに、資料の提供を求める手紙を書いた注18

三木首相からフォード大統領に1976年2月24日に送られた手紙拡大三木首相からフォード大統領に1976年2月24日に送られた手紙

 こうした状況の下で、首相の三木を支える立場にあった与党幹事長の中曽根が、党や政府の表向きの方針にも世論にも反する行動をとっていたことが公電には指し示されている。

 駐日大使の公電にあるように、米政府は、そうした行動が三木の真意を反映したものである可能性、つまり、日本の政権中枢が二枚舌を使っている可能性をも念頭に置かねばならなかった。米政府自身

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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