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調査・検証

検証・ロッキード事件

2-1) 「ハイレベルの米政府の圧力」で圧力

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第2部では、日米両政府の政治家がロッキードに便宜を図るために「天の声」を出し、関係者に「圧力」をかけようとした可能性を示唆する新たな資料に焦点をあてる。その第1回。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略しました。

  ▽この連載の   目次とリンク

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年2月号に掲載された原稿に加筆したものです。

 

 1972年9月20日、航空機メーカー「マクダネル・ダグラス」の副社長チャールズ・フォーサイスが、東京にある米国の駐日大使館を「緊急の用件」で訪ねた。

 「ハイレベルの米政府の圧力を理由に、日本政府が日本の航空会社にロッキードL1011を購入するよう圧力をかけている」

 フォーサイスはそんな苦情を経済担当の参事官に持ち込んだ。

拡大マクダネル・ダグラス副社長の苦情を報告した1972年9月20日の駐日大使館公電
 マクダネル・ダグラスはミズーリ州セントルイスに本社を置く米国の航空機メーカーで、当時、日本の航空会社に自社製の旅客機DC10を売り込もうと、代理店商社の三井物産とともに営業活動を展開していた。フォーサイスはマーケティング担当の副社長だった。一方、ロッキードは、米国カリフォルニア州に本社を置く航空機メーカーで、自社製の旅客機L1011トライスターを日本の航空会社、特に全日本空輸に売ることに社運をかけて、代理店商社の丸紅と組んでいた。つまり、民間旅客機の売り込みをめぐって、マクダネル・ダグラスとロッキードはお互いに競争相手であり、商売敵であった。

 「日本政府の圧力」とは何なのか? ワシントンDCの国務省に駐日大使館から送られた公電に次のように記されていた

 「フォーサイスによれば、三井物産の上級副社長が9月19日、中曽根通産相のオフィスに呼び出され……」

 総理大臣の田中角栄でも、運輸大臣の佐々木秀世でもなく、そこに名指しされていたのは通商産業大臣・中曽根康弘の事務所だった。(次回につづく

 ▽注: National Archives at College Park, Record Group 59: General Records of the Department of State, Subject-Numeric Files, 1970-73, Economic, Box 645, Folder AV - Aviation 12-1 Japan, 20 September 1972, "Aircraft Sales"

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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