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事件記者の目

関西電力元副社長・内藤千百里の証言

関西電力首脳から歴代首相への政治献金と原発建設ラッシュの関係は?

村山 治(むらやま・おさむ)

 関西電力の役員ら20人が、高浜原発が立地する福井県高浜町の森山栄治元助役(19年死去)から計約3億2千万円分の金品を受領していた問題。関電側は、生命線である原発事業に影響力を持つ森山の機嫌を損ねるのを恐れ、仕方なく受け取った、などと「被害者」の立場を強調するが、果たして、そうか。筆者は朝日新聞記者時代の2014年、関電の政官財の裏工作を取り仕切ってきた内藤千百里元副社長(18年死去)から地下経済も交差する関電の裏面史を聞いた。森山と関電の関係もその中に登場した。今回、改めて、内藤証言を軸に「関電の闇」の深層に迫る。第6回の本稿では、1970~80年代の関電の政界コネクションと原発建設ラッシュについて考察する。(敬称略)

 ●森山コネクションの原点は芦原・内藤

拡大関西電力本社=2019年12月9日、大阪市北区、朝日新聞社ヘリから、小宮路勝撮影
 関電社内の調査委員会がまとめた報告書(19年10月2日公表)は、森山について次のように指摘した。

 高浜3・4号機増設時に関電経営トップと何度も面談し、増設に関して依頼を受けたと話していた。森山氏は、その際、当社の経営トップから受け取ったという手紙やはがき等を保管しており、「発電所立地当時の書類は、今でも自宅に残っており、これを世間に明らかにしたら、大変なことになる。」などといった発言があった。

 関電幹部の金品受領問題を調査している関電の第三者委員会(委員長=但木敬一・元検事総長)は、関電役職員らに対する聴取をもとに、この「経営トップ」が、関電「中興の祖」といわれる芦原義重と、その芦原の「影」として政官界から地下社会までネットワークを広げ、森山とも親しい関係だった内藤とみている模様だ。

 内藤が14年4月23日のリーガロイヤルホテル大阪ジムでの朝日新聞記者のインタビューで「高浜と大飯と二つ、いっぺんにやってしまった。それが出来たのは私が彼と……」と言いかけて、言葉を濁したことは本連載初回に紹介した。

 内藤の言葉から、地元の顔役で福井県知事にも一目置かれた森山が、地元の原発反対派の懐柔や、知事の建設同意取り付けなどで関電側に協力したことは容易に推認できる。ただ、それだけでは、森山のいう「世間に明らかにしたら、大変なことになる」とは思えない。

 政官界のトップにも太いパイプを持つ芦原、内藤のような大物経営者が、その「借り」だけで、地方の町役場助役にすぎない森山を手厚く扱い、関電が組織ぐるみでつい最近まで工事発注情報を提供するなどの便宜供与をするものなのだろうか。

 芦原、内藤が、関電の原発事業をめぐり、もっと構造的な、中央の政官界がからむような秘密工作にかかわり、その事実を森山と共有、あるいは、森山につかまれていた可能性はないのか――。そういう疑問を持つ電力関係者は少なくない。しかし、芦原は2003年に亡くなり、政官界工作のキーマンだった内藤も2018年に世を去った。

 第三者委員会は、芦原、内藤がどういう政官界工作をしたのか、という視点で関電関係者を聴取したとみられる。しかし、内藤は1987年の「社内クーデター」で関電を追われた後、関電経営陣とは距離を置き、現経営陣や存命の元経営幹部らで内藤の肉声を知る人はほとんどおらず、調査は暗礁に乗り上げているようだ。

 結果として、朝日新聞が2013年から14年にかけて行った内藤のロングインタビューは、内藤の肉声を伝える唯一の

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村山 治(むらやま・おさむ)

 徳島県出身。1973年、早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。2017年11月、フリーランスに。この間、一貫して記者。
 金丸脱税事件(1993年)、ゼネコン事件(93、94年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界事件、大型経済事件の報道にかかわった。
 著書に「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「市場検察」(文藝春秋)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。共著に「ルポ 内部告発」(朝日新書)、「田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察『栄光』の裏側」(朝日新聞出版)、「バブル経済事件の深層」(岩波新書)。

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