メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

西村あさひのリーガル・アウトルック

証券会社に対する連結ベースでの規制・監督の導入

 2008年に起きた世界金融危機のきっかけは、米国の巨大証券会社グループの破綻だったとされる。日本でも、証券会社グループへの規制を強化すべく、一定規模以上の証券会社に対する連結ベースの規制・監督の枠組みが4月1日から導入された。適切な規制は必要だが、度が過ぎると、金融市場の健全な発展を阻害する要因ともなり得る。井下祐忠弁護士が、新たな規制導入の背景や内容を詳しく解説する。

 

証券会社に対する連結ベースでの規制・監督の導入
~「川下連結」「川上連結」とは~

西村あさひ法律事務所
 弁護士 井下 祐忠

拡大井下 祐忠(いのした・ひろただ)
 弁護士・ニューヨーク州弁護士。1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2002年ジョージ・ワシントン大学ロースクール修了(LL.M)。2007年より慶應義塾大学法科大学院非常勤講師。バンキング、金融機関規制法などを主な業務分野とする。

 ■はじめに

 平成23年4月1日より施行された金融商品取引法(以下では、単に「金商法」と呼ぶ)の改正により、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者、すなわち、証券会社に対する連結ベースでの規制・監督(いわゆる「川下連結」および「川上連結」)が導入された。これにより、従来は当局の規制・監督の対象とされていなかった、傘下に証券会社を有する企業グループの持株会社が、連結ベースでの規制・監督の対象となる可能性が出てきた。それは、実務上重要な意味を有すると考えられるため、その概要を解説することにしたい。

 ■連結ベースの規制・監督と単体ベースの規制・監督

 我が国における金融機関に対する規制・監督の態様としては、当該金融機関のみを対象とする単体ベースの規制・監督と、当該金融機関およびそのグループ会社を対象とする連結ベースの規制・監督とが存在する。連結ベースの規制・監督に服している例としては、銀行を挙げることができる。他方、従来の証券会社に対する規制・監督は、単体ベースで行なわれていた。

 ■従来の証券会社への規制・監督の枠組み

 従来の金商法の下では、証券会社に対し、原則として単体ベースの規制・監督が行なわれていた。すなわち、経営の健全性維持の観点からの自己資本規制比率、当局に対する業務および財産の状況を記載した事業報告書の提出、証券会社に対する当局による業務の運営または財産の状況の改善に必要な措置命令など、いずれも証券会社単体ベースのものとされていた。もっとも、当局の監督実務においては、国際的に活動する証券会社グループに対しては、連結ベースでの監督が行なわれていたところである。

 ■今般の証券会社グループへの規制・監督の強化の背景

 このように、従来、証券会社については単体ベースでの規制・監督が原則とされてきたのは、証券会社は銀行と異なって資金決済機能を担わないことから、その経営の悪化が金融システムに及ぼす影響が相対的に限定的であると考えられてきたことによるものである。しかしながら、近時の世界的な金融危機において見られたように、決済機能を担わない証券会社のような金融機関であっても、その破綻が引き金となって金融システムに深刻な悪影響を及ぼすおそれがあることが明らかになった。

 他方で、大規模かつ複雑な業務をグループで一体として行っている証券会社の場合には、グループ内の他の会社の経営悪化などの影響により当該証券会社本体が突然破綻する懸念があるにもかかわらず、従来の単体ベースの規制・監督では、そのような証券会社グループ全体の経営状況やリスク状況の把握は困難であった。国際的にも、国境を越えて活動する主要な商業銀行や投資銀行について、グループ全体の業務・リスク状況を当局が把握するための枠組み構築の必要性が提唱されている。

 このような状況を背景に、金商法を改正し、一定規模以上の証券会社に対する連結ベースの規制・監督(いわゆる「川下連結」および「川上連結」)が導入されることになった。以下では、川下連結および川上連結の内容についてそれぞれ簡単に説明することとしたい。

 ■川下連結

 「川下連結」とは、一定規模以上の証券会社、具体的には総資産額が1兆円を超える証券会社(ただし、外国法人は除かれる)について、当該証券会社(「特別金融商品取引業者」と呼ばれる)およびその子会社などからなるグループを規制・監督の対象とすることを意味する。川下連結による規制・監督の概要は、次のとおりである。なお、以下において、「子法人等」とは、支配力基準による子会社および影響力基準による関連会社などを指す。

・ 総資産額が1兆円を超える証券会社は、自らが「特別金融商品取引業者」である旨を当局に届け出なければならない。

・ 当該証券会社に親会社が存在する場合には、当該親会社の傘下に所属するグループ全体に関する業務および財産の状況などを記載した書面を当局に提出しなければならない。具体的には、親会社に関する基本的な情報、当該証券会社が属するグループの最上位の親会社に関する連結の四半期報告書、当該証券会社が属するグループが他の法令(外国の法令を含む)に基づく監督を受けている場合にはその旨、親会社による当該証券会社の経営管理や、グループ会社による当該証券会社に対する資金調達の

この記事の続きをお読みいただくためには、法と経済のジャーナルのご購読手続きが必要です。

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

法と経済のジャーナル Asahi Judiciaryは朝日新聞デジタルの一部です。
有料(フルプラン)購読中の方は、ログインするだけでお読みいただけます。

朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。