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西村あさひのリーガル・アウトルック

日米における内部通報・内部告発の奨励・保護制度

山田 将之(やまだ・まさゆき)

 企業が早期に社内の不正を発見し自浄作用を発揮するよう促す内部通報制度。その内部通報を保護することを目的とした公益通報者保護法が施行されて8年になる。企業コンプライアンスの一環として内部通報の重要性を理解し、誠実に内部通報と向き合う経営者も少なくないが、通報者が不利益な扱いを受ける例も後を絶たず、まだまだ発展途上の感は否めない。一方で、内部告発先進国の米国では報奨金制度に基づき内部告発者に報奨金を支払うなど積極的な運用が目立つ。山田将之弁護士が、米国と日本の制度と運用実態を、最近の判例を交えながら解説する。

 

日米における内部通報・内部告発の奨励・保護制度

西村あさひ法律事務所
弁護士 山田 将之

 1. はじめに

拡大山田 将之(やまだ・まさゆき)
 2001年早稲田大学法学部卒業。司法修習(58期)を経て、2005年弁護士登録。2012年米国ノースウェスタン大学ロースクール卒業(LL.M.)、2013年ニューヨーク州弁護士登録。2012年~2013年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman法律事務所勤務。危機管理案件、コンプライアンス案件等に従事。
 企業不祥事発覚のきっかけとしては、①役職員による通報・告発、②社外の者(取引先や競合他社等)による通報・告発、③内部監査等による発見、④税務署や監査法人等による指摘などがある。その中でも、①役職員による通報・告発により発覚する企業不祥事は多く、実例を挙げればきりがない。
 内部通報・内部告発は、企業不祥事の発見だけでなく、企業不祥事発生の事前抑制にも効果がある。すなわち、内部通報・内部告発がうまく機能している会社においては、役職員は、「不正を行っても必ずばれてしまう」「不正を隠しても無駄である」と感じて、不正行為に及ぶのをためらうであろう。
 このように、内部通報・内部告発は、企業不祥事の発見・防止の両面において非常に重要であり、日本においては平成18年に施行された公益通報者保護法を中心に内部通報・内部告発の保護が図られている。

 内部通報・内部告発の重要性はアメリカにおいても変わることはなく、アメリカでも内部通報・内部告発の奨励・保護制度が設けられている。そして、オリンパス事件や近時の海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practice Act、FCPA)違反事件を見れば分かるとおり、アメリカ証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission、SEC)を始めとするアメリカ当局による日本企業の摘発は珍しくなくなっており、内部告発をきっかけとして日本企業がアメリカで摘発される可能性も十分にある。また、アメリカに子会社を持つ会社においては、当該アメリカ子会社の従業員によって内部通報が行われる可能性があり、その場合の対応における留意点を知っておく必要がある。そのため、日本企業も、アメリカにおける内部通報・内部告発の奨励・保護施策について無関心ではいられない。

 本稿では、近時のトピックを踏まえ、日米における内部通報・内部告発の奨励・保護制度について概観する。なお、以下、会社が設けた相談窓口(コンプライアンス部門や顧問弁護士等)への不正行為の情報提供を内部通報と呼び、それ以外の者(当局やマスコミ等)への情報提供を内部告発と呼ぶ。

 2. 日本における内部通報・内部告発の奨励・保護

 日本における内部通報・内部告発の保護は、主に内部通報者や内部告発者に対する解雇や不当な人事処分を制限することによって行われている。具体的には以下のとおりである。

 (1) 公益通報者保護法

 公益通報者保護法は、一定の要件を満たす場合に、公益通報を行った労働者に対する解雇を無効とし、解雇以外の不利益な取扱いを禁止している。
 公益通報者保護法で保護される「公益通報」とは、労働者が、不正の目的なしに、勤務先会社やその役職員等について「通報対象事実」が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該会社若しくは当該会社が定めた通報先、関連当局又は当該通報対象事実の発生・被害の拡大を防止するために必要であると認められる第三者に通報することをいう。「通報対象事実」とは、同法の別表に記載された法律(平成26年5月21日現在で442本)によって犯罪や行政処分の対象となる事実をいう。
 同法によって公益通報者が保護されるためには、通報先に応じて3段階の要件を満たす必要がある。簡潔にいうと、社内に通報する場合には、①通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると公益通報者が考えただけで保護の対象となるが、当局に通報する場合には、これに加えて②通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると公益通報者が考えたことに相当の理由があることが必要である。そして、外部の第三者(マスコミや消費者団体等)に通報する場合には、上記2つの要件に加え③外部の第三者への通報が必要であると認められる特定の事情(具体的には、社内窓口への通報では報復を受けるおそれがあったり、証拠隠滅がなされるおそれがあるような場合等)が要求される。当局や外部の第三者への通報に当たり要件が加重されているのは、企業不祥事等の情報が当局や外部の第三者といった社外の者にもたらされた場合には企業におけるレピュテーションダメージが大きいことから、企業の利益と公益通報者の利益の調整を図ったものである。

 公益通報者保護法は、施行からすでに8年が経過し、見直しの議論が盛んである。平成25年7月23日に内閣府の消費者委員会が公表した「公益通報者保護制度に関する意見」では、公益通報者に対する解雇・不利益取扱いの禁止に違反した事業者に制裁を課すこと等が提案されている。それ以外にも、同法で保護される「通報対象事実」の限定をなくすべきである、同法で保護されるのは「通報対象事実」が生じ又は生じようとしている会社の従業員に限られているが、これを役員・元従業員・取引先や下請け業者等にも拡大すべきである、当局や外部の第三者への通報について保護の要件を緩和すべきであるといった議論がある。

 (2) 公益通報者保護法以外の保護

 公益通報者保護法における保護の対象とならない場合であっても、内部通報・内部告発に対する報復として当該従業員を解雇したり、不利益を課したような場合には、当該不利益な人事処分が無効となったり、会社が不法行為等による損害賠償義務を負ったりすることがある。
 平成24年6月28日に最高裁決定が出たオリンパス配転命令無効確認等事件では、会社の配転命令が内部通報を行ったことに対する報復として行われたものかどうかが争われた。オリンパスの従業員であったH氏は、10年以上に亘り営業職を担当していたが、他の従業員が取引先の従業員の引き抜きをしていることを知り、上司及びコンプライアンス室にそのことを通報したところ、配転を命じられ営業担当から外された。そこで、H氏が当該配転は内部通報を契機とする不当な動機目的に基づくものであり、公益通報者保護法の趣旨に照らして違法無効である等と主張して訴訟を提起した。この事件において、最高裁は、配転命令は、業務上の必要性と無関係になされたものであり、人事権の濫用であるとして、H氏は配転命令を拒むことができると判示している。
 オリンパス配転命令無効確認等事件では社内における内部通報の保護が問題となったが、外部の第三者に情報提供を行う場合は、会社に対する誠実義務や守秘義務等に違反する場合もあるから、会社の利益と内部通報の公益的価値のバランスが問題となる。裁判例は、基本的に、①告発内容が真実であるか又は真実と信じる相当な理由があるか、②目的が公益性を有するか、③内部告発の手段・態様が相当であるか等を総合的に考慮して、内部告発者に対する処分の適否を判断している。

 なお、解雇や不利益な処分が制約されるのは、内部通報・内部告発を行ったことに対する報復として正当な理由なしに解雇等を行った場合であり、内部通報者・内部告発者に対し正当な理由により解雇等を行うことは可能である。現実を見ると、残念ながらすべての内部通報・内部告発が誠実なものとは限らない。特定の個人や会社への嫌がらせとして内部通報・内部告発が行われたり、そこまでいかなくとも、会社が内部通報に基づき適切な社内調査を行い、その結果不正の事実が発見されなかったことを会社が内部通報者に報告したにもかかわらず、当該内部通報者が繰り返し同じような内部通報を行うような場合もある。このような場合、会社としては、非違行為に当たること等を理由に適法に不利益な人事処分を行う余地がある。また、内部通報に基づき社内調査を行った結果、内部通報者自身が不正行為に関与していることが判明した場合には、不正行為に関与したことを理由に懲戒処分を行うことも可能である。これらの場合には、会社としては、内部通報・内部告発に対する不当な報復であると言われないよう、公平な手続に基づいて十分な社内調査を行って内部通報・内部告発に係る事実が真実かどうかを確認することが重要である。また、内部通報者・内部告発者とのやりとりの経緯や、処分の理由についてしっかりと証拠化しておくのがよい。

 3. アメリカの内部通報者保護制度

 アメリカにおいて、一般の企業に適用されうる内部通報保護を規定した重要な法律としてはSOX法(Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002)とドッド=フランク法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)がある。

 (1) SOX法

 SOX法は、エンロン事件、ワールドコム事件などを受けて、企業会計・財務諸表の信頼性を向上させ、株式市場の透明性を高めて、投資家を保護することを目的として2002年に制定された法律である。
 同法は、「上場会社又はその役職員、請負業者、下請け業者等」が、「従業員(employee)」に対し、合法的な内部通報・内部告発を理由とする解雇、降格、停職、脅迫、嫌がらせ、及びその他の差別的な行為をすることを禁止している。保護される内部通報・内部告発は、郵便・通信・銀行・証券の詐欺行為を禁じる連邦法、SEC規則、又は株主の不正手段に係る連邦法の規定に違反すると合理的に信じる従業員が、当該従業員に対して監督権限を有する者等(当該会社の上司、内部通報窓口のほか、会計監査人や当局等も含む)に対して行う情報提供である。例えば、FCPA違反について社内窓口に情報提供するような場合もこれに含まれる。
 内部通報・内部告発を理由に差別的な行為等を受けた従業員は、当該差別的な行為等を知ってから180日以内に労働長官(Secretary of Labor)に申立てを行わなければ救済を受けられない。従業員が内部通報・内部告発を理由に差別的な行為等を受けたと認められた場合には、現状回復に必要な救済(同等の役職への復帰・利子を含む期限経過給与の支払い・訴訟費用等の補償等)が受けられる。
 また、SOX法は、連邦犯罪又はそれに該当するおそれのある行為に関する信用できる情報を捜査当局に提供したことに関して、故意に、差別的な行為等を行う目的で、雇用関係や生活等に危害を加える行為を行った者には、刑事罰として、罰金又は10年以下の禁固刑若しくはそれらを併科すると規定している。かかる刑事罰に関しては、保護主体が限定されておらず、上場会社の従業員でない内部告発者に対して行った危害行為であっても処罰の対象となる。どのような行為が「危害を加える行為」なのかは明確ではないが、司法妨害や証人威迫に当たるようなものだけではなく、例えば、職場において机を物理的に不便な場所に移すことや、自宅の前で騒音を出すといったような単純な嫌がらせ行為も程度によっては処罰対象となりうる。
 さらに、SOX法は、監査委員会(Audit Committee)に、①会計等に関する従業員の申立てを受理し対応するための手続、②会計又は監査に関わる事項についての照会を従業員が秘密裏且つ匿名でなすことができる手続を定めることを要求している。もっとも、内部通報・内部告発制度の具体的中身については会社に委ねられている。

 SOX法は、「従業員」に対する差別的な行為等を禁じているが、この「従業員」が上場会社の従業員に限定されるのか、それとも上場会社の請負業者等の従業員も含むのかは条文上明確でない。すなわち、上場会社Aの従業員aがA社の不正について内部告発をしたところ、A社の取引先であるB社(非上場会社)がaに対し嫌がらせをすることは、SOX法によって禁止されていると考えられる。では、上場会社Aの請負業者であるB社(非上場会社)の従業員bがA社の不正について内部告発を行ったところ、B社がbに対する報復として解雇することはSOX法により禁止されるのであろうか。
 この点について、アメリカ連邦最高裁は、2014年3月4日、「従業員」には請負業者等の従業員も含むとの判断を示した(注1)。当該事案は次のようなものである。被告はフィデリティ社が管理するファンド(公開会社)との契約に基づき同ファンドに対してアドバイス業務等を行っている非公開会社である。原告らは、被告の従業員であったが、被告に対しフィデリティ社が管理するファンドの経営に関する懸念を指摘したところ解雇等されたため、SOX法の内部通報者保護に違反すると主張して訴訟を提起した。連邦最高裁は、SOX法の条文の文言解釈として、本件のような場合には「上場会社の請負業者」は「当該請負業者の従業員」に差別的な行為等をしてはならないと読むべきだと解した上で、SOX法の立法過程において米国議会が上場会社の請負業者等の従業員も保護する趣旨で内部通報者・内部告発者保護制度を創設したとの立法事実を認定して、SOX法は上場会社の請負業者が当該請負業者の従業員に対して差別的な行為等をすることも禁止していると判断した。

 (2) ドッド=フランク法

 ドッド=フランク法は、2008年秋のリーマンショックを契機とする国際金融危機の再発防止を目的として、2010年に制定された。企業の問題の早期発見と是正が金融安定化に資するとの考えから、同法に基づいて1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)に内部告発に関する条項が追加された。
 ドッド=フランク法は、一定の要件の下、SECが内部告発者に対し報奨金を与えるとしている点が特徴的である。すなわち、SECに対し証券法の違反に関して情報を提供した者を「内部告発者(whistleblower)」と定義し、内部告発者が、SECが定めるフォームに従って、SECが把握していなかった独立の情報源に基づく情報提供を自主的に行い、その結果SECが100万ドルを超える制裁金の取得に成功した場合には、SECが当該内部告発者に対し、当該制裁金の10~30%に相当する額の報奨金を支払うとしている。SECの内部告発者部(Office of the Whistleblower、OWB)が公表したドッド=フランク法の内部通報プログラムの2013年度の報告書(注2)によれば、ドッド=フランク法の報奨金支払い条項に基づき、2013年度中にSECが受領した情報提供フォーム(FORM TCR)は3,238通であり、日本からも3件の情報提供があったとのことである。そして、2012年8月に本報奨金制度に基づき最初の報奨金の支払いをして以降、これまでに6人の内部告発者に報奨金を支払っており、2013年度には4人の内部告発者に対し計約1500万ドルを支払ったとのことである。

 また、ドッド=フランク法は、内部告発者が適法に行った①SECへの情報提供、②SECによる調査等への協力、又は③SOX法やその他SECが所管する法令により要求され、又は保護されている開示を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁止している。かかる禁止に違反した場合には、内部告発者は、地位回復、利息付き2倍賃金の支払い、訴訟費用及び弁護士費用の補償等を請求できる。かかる請求についてはSECがエンフォースメントを行うこともできる。2014年6月16日、SECは初めてドッド=フランク法のかかる条項に基づく請求を行い、内部告発者に対し職責の変更等の不利益な取扱いを行ったとされるヘッジファンドアドバイザー業者及びそのオーナーが220万ドルを支払うことで和解した(注3)
 内部告発者への不利益な取扱いの禁止はSOX法の規制と重なり合う部分もあるが、ドッド=フランク法は、上場会社だけでなくすべての会社を適用対象にしている点、SOX法のように告発対象事実を郵便・通信・銀行・証券の詐欺行為を禁じる連邦法違反等に限定していない点(ただし、ドッド=フランク法でも保護されるのはSECが所管する法令についての内部告発に限られる)でSOX法における内部通報者保護よりも範囲が広くなっている。また、ドッド=フランク法の不利益な取扱い禁止条項に基づく請求の消滅時効は、報復を受けてから6年又は請求の重要事実を知ってから3年とされており、報復を知ってから180日以内に申立てをしなければならないSOX法よりも保護が厚くなっている。

 かかる不利益な取扱いの禁止について、社内窓口等に内部通報を行った者も保護対象に含まれるのか議論がある。すなわち、ドッド=フランク法は、SECに対し証券法の違反に関して情報を提供した者を「内部告発者」として定義し、そのような「内部告発者」に対する不利益な取扱いを禁止しているため、SECに対し情報提供をしていない者、例えば、社内窓口に内部通報を行った者は保護の対象とならないようにも読める。一方で、同法の不利益な取扱い禁止条項は、保護対象行為として「SOX法やその他SECが所管する法令により要求され、又は保護されている開示」を定めており、SOX法では社内への内部通報も保護されうることから、SECに対する情報提供でなくとも、ドッド=フランク法上の不利益な取扱い禁止条項の保護の対象になるのではないかとの議論があるのである。
 この点について、連邦第5巡回区控訴裁判所は、2013年7月、連邦巡回区控訴裁判所として初めて判断を示し、SECに情報提供をした者のみがドッド=フランク法の不利益な取扱い禁止条項の保護を受けるとした(注4)。当該事案において、原告は、GE Energy(米国会社)の従業員であったが、2010年に、FCPA違反の疑いがあることを上司及びGEの地域オンブズマンに通報したところ、不当に低い勤務評価を受け、責任範囲の縮減に応じるよう要求され、原告がこれに応じなかったところ解雇された。原告は、SECへの情報提供を行っていないため自己がドッド=フランク法の定義する内部告発者に該当しないことは認めつつも、「SOX法やその他SECが所管する法令により要求され、又は保護されている開示」をしたものであるから、このような場合には、内部告発者の概念は拡張され、自身は不利益な取扱い禁止の保護対象となると主張した。連邦第5巡回区控訴裁判所は、ドッド=フランク法は、SECに対し証券法の違反に関して情報を提供した者を内部告発者と定義していることを指摘し、条文の素直な解釈に照らせば、SECに情報提供を行った者のみが同法によって保護されると判示した。
 また、Siemensの中国子会社の従業員が、同社が北朝鮮の病院に医療画像機器を販売する際にキックバックをもらっていたという疑いについて社内に報告したところ、雇用契約の終了期限前に解雇された(なお、当該従業員は解雇された後にSECに情報提供した)という事案において、2013年10月、ニューヨーク州南部連邦地裁は、ドッド=フランク法はアメリカ国外には適用されないことに加え、当該従業員は、雇用契約が終了した後にSECに情報提供したものであり、ドッド=フランク法上保護される「内部告発者」に当たらないことを理由に、原告の訴えを却下した(注5)。しかし、同事件について、2014年2月、SECは、amicus brief(第三者による意見書)を提出し、内部通報は不正の発見・防止に役立ち投資家保護に資するものであって、内部通報者にもSECに報告した者と同様の保護が与えられることが法の趣旨であるとの意見を述べている(注6)。また、2014年5月には、連邦地方裁判所において「ドッド=フランク法の報奨金支払いの対象はSECに情報提供をした者に限られるが、不利益な取扱いの禁止についてはSECに情報提供していない者も保護対象となる」旨の判断が示されており、今後の展開が注目される。

 4. おわりに

 日本においては、内部通報者・内部告発者の保護は、解雇権濫用法理や人事権濫用の議論によって比較的柔軟に処理されているといえる。
 これに対し、アメリカでは、原則として、会社が従業員を解雇したり処分したりすることは自由であって、SOX法やドッド=フランク法等の保護対象となる場合にのみ内部通報者・内部告発者が保護される仕組みとなっている。そのため、いかなる者のいかなる行為がSOX法やドッド=フランク法等における保護対象となるのか、その外

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山田 将之(やまだ・まさゆき)

 2001年早稲田大学法学部卒業。司法修習(58期)を経て、2005年弁護士登録。2012年米国ノースウェスタン大学ロースクール卒業(LL.M.)、2013年ニューヨーク州弁護士登録。2012年~2013年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman法律事務所勤務。企業不祥事が発生した際の社内調査・当局対応を始めとする危機管理案件、不祥事の未然防止のためのコンプライアンス体制整備案件等に従事。
 主な著書に、『ここがポイント 事業者の内部通報トラブル』(法律情報出版、2016年) 、『危機管理法大全』(商事法務 、2016年)、「実務家のための海外贈賄リスクマネジメント」リスクマネジメントTODAY 92号(2015年)など。

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