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西村あさひのリーガル・アウトルック

プロ向けファンド業者に関する規制の強化

本柳 祐介(もとやなぎ・ゆうすけ)

 プロ向けファンド業者に対する規制を強化する法改正に伴い、改正法を具体化する政令・内閣府令案が11月20日に公表された。お年寄りに「必ず儲かる」と違法な勧誘をしたり、集めた資金を流用したりするなど悪質業者が続出したのを受けての抜本改正。パブリックコメントの結果を踏まえ2016年6月までに改正法が施行される見通しだ。本柳祐介弁護士が政令・内閣府令案の概要や狙いについて詳細に解説し、実務上の注意点を喚起する。

 

プロ向けファンド業者に関する規制の強化

弁護士・NY州弁護士
本柳 祐介

 1  はじめに

拡大本柳 祐介(もとやなぎ・ゆうすけ)
 2001年早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。2010年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、2009年~2010年、米ニューヨークのデービス・ポーク・アンド・ウォードウェル法律事務所勤務、2011年~2012年ドイツ証券株式会社出向、2011年ニューヨーク州弁護士登録。現在西村あさひ法律事務所パートナー。
 プライベート・エクイティ・ファンドやベンチャー・キャピタル・ファンドといった有価証券に投資するファンドは、投資事業有限責任組合をはじめとする組合型のファンドとして組成されているが、今般、これらのファンドに対する規制が強化される。
 そもそも、有価証券に投資する組合型のファンドでは、ファンドの投資家を募る行為及びファンドの資産を運用する行為が金融商品取引法によって規制されている。そして、ファンドの運営者(投資事業有限責任組合であれば無限責任組合員。一般にGPと呼ばれる)が行うこれらの行為は、いわゆるプロ向けファンドとして比較的緩やかな要件を満す限り、特例措置として簡易な届出書の提出及び若干の規制の遵守のみで足りるものとされていたが、今般の改正により、上記の特例の要件が厳格化され、規制が強化される。
 この規制強化については、既に金融商品取引法の一部を改正する法律(以下「改正法」)が2015年5月27日に成立し、同年6月3日に公布されているところであるが、改正法を具体化する政令及び内閣府令の案が2015年11月20日に公表され、12月21日を期限としてパブリックコメントの募集がなされていた。
 今後、このパブリックコメントの結果を踏まえて政令及び内閣府令が最終化され、遅くとも2016年6月までには改正法が施行されることとなる。
 なお、本稿は2015年11月20日に公表された政令及び内閣府令の案をもとに記載している(以下、特段の断りがない限り、金融商品取引法施行令案の条文は令●●条、金融商品取引業等に関する内閣府令案の条文は業府令●●条として、それぞれ引用する)ため、最終の政令及び内閣府令の内容とは異なる可能性があることに留意されたい。

 2  現行の特例措置の概要

 ファンドの運営者(GP)がファンドの投資家を募る行為(自己募集)は、第二種金融商品取引業に該当し、ファンドの資産を運用する行為(自己運用)は投資運用業に該当する。そのため、ファンドの運営者がこれらの行為を行うには、原則として金融商品取引業者としての登録が必要となる。これに対する重要な例外として、適格機関投資家等特例業務に関する特例(いわゆる「プロ向けファンドの特例」)が存在する(金商法63条以下)。
 適格機関投資家等特例業務に関する特例は、あるファンドについて、①1名以上のプロ(適格機関投資家)が投資すること、②アマ(適格機関投資家以外の投資家)の数が49名以下であること、及び③不適格投資家(適格機関投資家以外の者から出資を受けた特定目的会社、匿名組合など)が存在しないこと、の3つの要件が充足される場合に適用される。そして、これらの要件を満たす限り、ファンドの運営者は届出のみをもって投資家の募集及びファンド資産の運用を行うことができ、適用される規制も、勧誘の際の虚偽告知の禁止(金商法38条1号)及び損失補てんの禁止(同39条)に限られている。かかる例外は、プロの投資家がチェックの上で投資をするファンドであれば、規制を緩和しても大きな問題は生じないという考え方に基づいて認められている。

 3  投資家の範囲の限定

 (1) 投資判断能力を有すると見込まれる者と密接に関連する者

 改正法の下では、まず、投資家の範囲に限定が加えられる。これまでは、適格機関投資家以外の投資家(アマ)の範囲に限定がなく、投資経験のない個人などもファンドの投資家として認められていたが、今般の改正により、特例措置が適用されるための投資家の範囲が限定され、(a)投資判断能力を有すると見込まれる一定の者及び(b)ファンド運営者(GP)と密接に関連する者に限定される(令17条の12第1項、業府令233条の2)。
 上記(a)のファンドの投資家となり得る者は、政令及び内閣府令に列挙されており、投資判断能力を有すると見込まれる一定の者としては、法人の場合には、①金融商品取引業者等、②上場会社、③資本金又は純資産が5,000万円以上の法人、④上記①~③の子会社等又は関連会社等、④有価証券等の投資性資産が100億円以上の企業年金基金又は存続厚生年金基金、⑤投資性資産が1億円以上の法人、⑥外国法人などが列挙され、個人の場合には、証券等取引口座開設後1年以上経過し、かつ投資性資産を1億円以上保有する個人などが列挙されている。
 他方、上記(b)のファンド運営者(GP)と密接に関連する者としては、①ファンド運営者の役職員、②ファンド運営者の親会社等又は子会社等、③ファンドの運用権限を受託する者又はファンドに対して投資助言を行う者、④上記②及び③の役職員などが含まれる。

 (2) ベンチャー・ファンド特例

 更に、ファンドに投資できる投資家の範囲を拡げるものとして、ベンチャー・ファンド特例が設けられ、所定の要件を満たすファンドは、特例として、投資に関する知識及び経験を有する者も、上記(1)に列挙された者に加えて投資家として認められる。
 具体的には、①上場会社の役員、②過去5年以内に上場会社の役員であった者、③通算1年以上の期間、会社の役職員又はアドバイザーとして会社の運営に関する業務(設立、株式募集、新事業活動の実施、M&A、上場、経営戦略作成、財務諸表作成、株主総会・取締役会の運営に限られる)に従事し、かつ、最後に従事してから5年以内の者、④有価証券報告書において大株主として記載された者、⑤経営革新等支援機関として認定されている公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士、税理士なども、上記(1)に列挙された者に加えて、特例措置の適用を受けるファンドの投資家として認められることとなる(令17条の12第2項、業府令233条の3)。
 かかるベンチャー・ファンド特例は、以下の要件を全て満たす場合に認められるが、一般に理解されるベンチャー・ファンドよりも広く、プライベート・エクイティ・ファンドなども含まれ得る(令17条の12第2項、業府令233条の4)。

 ① 出資金(現預金を除く)の80%超を非上場会社の株券、新株予約権証券等に投資するものであること
 ② 資金の借入れ又は債務の保証の額が出資額の15%未満であり、かつ、非上場の投資先企業に対する保証並びに120日以内の借入れ及び保証のいずれかに限られること
 ③ やむを得ない事由がある場合を除き、出資者の請求により払戻しを受けることができないこと
 ④ 契約において、(ⅰ)財務諸表等の作成、(ⅱ)出資者に対する監査済監査報告書の提供、(ⅲ)投資実行時における出資者に対する報告、(ⅳ)年次出資者集会による報告、(ⅴ)出資者の多数決によるファンド資産運用者の選解任、(ⅳ)出資者の多数決による契約の変更などが定められていること
 ⑤ 契約の締結までに、出資者に対し、上記①~④に掲げる要件に該当する旨を記載した書面を交付すること

 また、このベンチャー・ファンド特例を利用する場合には、ファンド契約書の写しを、原則として届出後3か月以内に所轄の財務局長等に提出しなければならない(金商法63条9項、令42条2項18号)。

 (3) 新たなファンド投資家の属性による不適格事由

 現行法の下では、ファンドが不適格投資家(適格機関投資家以外の者から出資を受けた特定目的会社、匿名組合等)から出資を受けると、適格機関投資家等特例業務の要件を充たさないこととなり、「プロ向けファンドの特例」は利用できないものとされている(不適格投資家からの出資受入れに基づく適格機関投資家等特例業務該当性の喪失)。
 この点、改正法下では、この不適格投資家の範囲に変更はないが、ファンド投資家の属性による不適格事由が新たに定められる(業府令234条の2)。
 まず、出資又は拠出をする適格機関投資家が投資事業有限責任組合のみであって、かつ当該投資事業有限責任組合が5億円以上の運用資産残高(借入れを除く)を有しない場合には、「プロ向けファンドの特例」は利用できないものとされる。
 また、特例業務届出者の子会社等、ファンドの資産運用権限を受託する者、ファンドに対して投資助言を行う者、及びこれらの役職員などからの出資割合が2分の1以上である場合についても、「プロ向けファンドの特例」は利用できない(なお、特例業務届出者の親会社等からの出資割合が2分の1以上であっても「プロ向けファンドの特例」は利用できる)。

 4  業者の欠格事由の導入

 改正法により、金融商品取引業者の登録拒否事由と同様に、業者の欠格事由が定められる(金商法63条7項)。
 具体的には、国内法人の場合、①金商法違反による登録取消し等を受けた法人、②金融サービスに関する法令の違反による罰金に処せられた法人、③役員が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、④役員が禁錮以上の刑に処せられた者、⑤役員が金商法違反による登録取消し等をうけた法人の役員であった者、⑤役員又は政令で定める使用人のうちに暴力団員等のある者は、適格機関投資家等特例業務の特例(「プロ向けファンドの特例」)を利用できなくなる。
 また、外国法人の場合には、上記に加え、①国内における代表者を定めていない者、②日本政府の調査協力の要請に応じる旨の本拠地等の規制当局による保証がない者も、適格機関投資家等特例業務の特例(「プロ向けファンドの特例」)を利用できなくなる。
 なお、個人の場合にも同様の欠格事由が定められている。

 5  届出内容の拡充

 適格機関投資家等特例業務を行うためにはあらかじめ届出を行う必要があるが、改正法では、その届出内容が拡充される。具体的には、届出書の様式である別紙様式第二十号が改訂され、ファンドの事業の内容、適格機関投資家以外の出資者の有無、ベンチャー・ファンド特例による投資家の有無、公認会計士又は監査法人の氏名又は名称などの記載が求められることとなる。
 また、これまでも1名以上の適格機関投資家の名称の記載が求められていたが、改正後は、全ての適格機関投資家の名称を記載すべきものとされる(金商法63条2項、業府令238条、別紙様式第二十号)。更に、改正法の下で、届出書に添付すべき書類も新たに定められた(金商法63条3項、業府令238条の2)。
 なお、届出事項の一部は、監督当局及び届出者が公表することとなる(金商法64条5項・6項、業府令238条の4、238条の5)。

 6  行為規制

 (1) 行為規制

 現行法では、適格機関投資家等特例業務の届出者(特例業務届出者)に対しては、勧誘の際の虚偽告知の禁止(金商法38条1号)及び損失補てんの禁止(同39条)のみが適用されていたが、改正法の下では、より幅広い規制が適用されることになる(同63条11項)。
 具体的には、顧客に対する誠実義務(金商法36条1項)、(顧客の属性に応じた勧誘をすべきとする)適合性の原則(同40条1号)、ファンド資産の分別管理の確保(同40条の3、42条の4)、ファンド投資家に対する善管注意義務・忠実義務(同42条1項・2項)などが新たに適用されることとなり、特例業務届出者は、行為規制に関しては、かなり金融商品取引業者に近い取扱いを受けることになる。
 また、比較的重い追加負担としては、契約締結前交付書面の交付義務(金商法37条の3)、契約締結時交付書面の交付義務(同37条の4)、運用報告書の作成・交付義務(同42条の7)が挙げられる。これらの書類については、記載すべき内容が業府令で細かく規定されているため、適式な書面作成のために必要となる事務負担は小さくない。
 また、運用に関する禁止行為(金商法42条の2)も適用され、自己取引、役職員との取引、運用財産相互間取引などが禁止されることとなる。但し、運用財産相互間取引の禁止については、ベンチャー・ファンド特例の要件を満たす場合には、出資持分の3分の2(これを上回る割合を定めた場合にあっては、その割合)の同意などにより、適用除外が認められるものとされている(業府令129条1項3号・4号)。
 このほかにも、名義貸しの禁止(同36条の3)、広告規制(同37条)、勧誘に関する断定的判断の提供その他の禁止(同38条2号・8号)、金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同40条の3の2)も適用されることとなる。
 加えて、プロ投資家に対する規制の一部適用除外を認める特定投資家制度(金商法34条以下)も適用されるため、プロ投資家である特定投資家のみを相手とする場合には、契約締結前交付書面の交付義務(同37条の3)、運用報告書の作成・交付義務(同42条の7、業府令134条5項4号)などを免れることができる一方で、(プロ投資家ではない一般投資家としての取扱いを申し出ることができる)特定投資家に対しては、その旨を告知する義務(金商法34条)が適用される。

 (2) 帳簿書類の作成・保存

 改正法の下では、特例業務届出者に対して、新たに帳簿書類の作成・保存が求められることになる(金商法63条の4第1項、業府令246条の2第1項)。
 具体的には、必要とされる帳簿書類は、①(プロ投資家に対する規制の一部適用除外を認める)特定投資家制度に関する説明書類及び同意書(金商法34条の2第3項、34条の4第2項、34条の3第2項、34条の4第6項)の写し又は原本、②契約締結前交付書面(同37条の3第1項)、契約締結時交付書面(同37条の4第1項)及び契約変更書面の写し、③私募等に係る取引記録(業府令162条)、④顧客勘定元帳(同164条)、⑤運用権限の委託の内容を記載した書面(当該委託に関する契約書を含む)、⑥運用報告書(金商法42条の7)の写し、⑦運用明細書(業府令170条)である。なお、投資家の勧誘を行わない場合には上記③及び④は不要であり、ファンド資産の運用を行わない場合には上記⑤から⑦までは不要である。
 因みに、①及び②については5年間、③から⑦までは10年間の保存が求められる。

 (3) 事業報告書

 改正法の下で、特例業務届出者は、事業年度ごとに事業報告書を作成し、原則として毎事業年度経過後3か月以内に所轄財務局長に提出することが義務づけられる(金商法63条の4第2項)。
 事業報告書は、別紙様式第二十一号の二により作成されることになるが(業府令246条の3第1項)、細かい事項まで記載が求められる。具体的には、①当期の業務概要、②株主総会決議事項(適格機関投資家等特例業務に関連するもの)の要旨、③当期末現在における上位10位までの株主、④外部監査の状況、⑤内部管理の状況、⑥設定及び償還の状況、⑦自己又は関係会社が発行する有価証券の組入れ状況、⑧出資額が大きい適格機関投資家の上位10名、⑨主な投資対象資産、⑩投資対象地域、⑪総出資額の10%以上の取引に関する金融商品取引行為の相手方の状況、⑫配当等の額、⑬想定配当等利回りなどの記載が求められる。
 もっとも、出資者がプロの投資家である特定投資家のみである場合には、上記⑪の総出資額の10%以上の取引に関する金融商品取引行為の相手方の状況、上記⑫の配当等の額、上記⑬の想定配当等利回りなど一部の記載を省略することができる。

 (4) 説明書類

 改正法の下で、特例業務届出者は、事業年度ごとに説明書類を作成し、毎事業年度経過後4か月を経過した日から1年間、これを備置き又は公表することが義務づけられる(金商法63条の4第3項)。
 説明書類は、別紙様式第二十一号の三に従って作成するか、又は事業報告書をそのまま説明書類とすることができる(業府令246条の5)。
 事業報告書をそのまま説明書類とすれば事務負担を減らすことができるが、別紙様式第二十一号の三に記載すべき内容は事業報告書の内容よりも少ないため、別紙様式第二十一号の三に従って説明書類を作成すれば投資家に対して提供する情報を限定することができる。

 (5) 監督上の処分・報告の徴取及び検査

 改正法では、特例業務届出者に対する監督上の処分に関する規定(金商法63条の5)並びに報告の徴取及び検査に関する規定(同63条の6)が追加された。

 7  既存の特例業務届出者に対する影響(経過措置)

 改正法の施行時に適格機関投資家等特例業務としてファンド資産の運用を行っている者は、施行後もこれを継続することができる(改正法附則2条1項)。但し、施行日から起算して6か月以内に改正後の届出書の様式である別紙様式第二十号による書面を提出しなければならない(同3条、改正府令附則3条)。
 この経過措置に基づいて「プロ向けファンドの特例」を利用する業者にも、基本的には改正後の金商法の規制が適用される(改正法附則2条2項・3項)。そのため、施行日後は、自己取引その他の資産運用に関して禁止される行為を行うことができなくなり、また、帳簿書類を作成することが義務づけられる。
 もっとも、前記4で述べた欠格事由については経過措置が定められており、外国法人である届出業者に関する日本政府の調査協力の要請に応じる旨の本拠地等の規制当局による保証の要件は不要とされ、国内における代表者も施行日から6か月以内に設置すればよいものとされている。また、その他の欠格事由については5年以内に満たせばよいものとされている(改正法附則5条)。
 加えて、事業報告書及び説明書類については、施行日以後に開始する事業年度から作成すればよいとされているほか(改正法附則6条)、従前からベンチャー・ファンド特例の要件を満たすファンドについては、運用財産相互間取引の禁止は適用されないものとされている(改正府令附則2条)。
 なお、経過措置はファンドの資産運用行為の継続を認めるのみであって、既存ファンドについて新たにファンド投資家を募集する行為には経過措置の適用はない(改正後の金商法がそのまま適用される)。

 8  改正に伴う実務対応の留意点

 既に適格機関投資家等特例業務を行っている業者については、施行日後6ヶ月以内に別紙様式第二十号による書面の提出が必要となるため、この準備が必要となる。また、適用される規制の遵守のために社内体制の整備が求められる。作成が必要な各種書類については、あらかじめ記載内容を検討し、作成に必要な情報の所在を踏まえた社内体制を整備しなければならない。
 更に、遵守が必要な各種規制については社内規程の策定とその遵守を実現するための教育・内部監査の体制の整備が必要となるが、社内規程として整備すべきものとしては、例えば、広告規程、勧誘規程、運用規程、内部監査規程などが考えられる。
 改正法の施行時に適格機関投資家等特例業務としてファンド資産の運用を行っている者が改正法の施行後にファンド投資家の募集を行う場合にも社内体制を整備しなければならないが、これに加え、改正法令に適合したファンド契約書を作成することも必要と考えられる。具体的には、法令遵守のためにファンド契約書に投資家の属性に関する表明保証条項を追加するほか、ファンドが不適格とならないよう、譲渡禁止に関する規定を適宜調整することなどが考えられる。また、ベンチャー・ファンド特例を利用する場合には、この要件を満たす内容の契約書とする必要がある。
 更に、海外の業者の場合には、上記に加えて国内における代表者を選定する必要がある。具体的には、既に適格機関投資家等特例業務を行っている海外業者については施行日後6か月以内に、改正法令の施行後にファンド投資家の募集を行う場合にはあらかじめ、それぞれ国内における代表者を選定しなければならない。
 なお、適格機関投資家等特例業務の特例(「プロ向けファンドの特例」)を利用することによる負担を避け、他の特例を利用するなどして金融商品取引業者としての登録なしにファンドの運営を行うことも考えられる。例えば、ファンド投資家の勧誘については、登録済みの金融商品取引業者に私募等の取扱いを依頼することにより、ファンド運営者自身は投資家の勧誘を行わないという方法等が考えられる。また、ファンド資産の運用についても、登録済みの金融商品取引業者に全面的に委託することで、ファンド運営者自身は資産運用行為を行わないという方法等が考えられる(定義府令16条1項10号)。更に、海外ファンドの資産運用であれば、①国内の投資家を10名未満の適格機関投資家に限定し(投資家がファンドである場合にはその背後の投資家も加算する)、かつ、②国内の投資家の出資額がファンド全体の出資額の3分の1以下であることという要件を満たすことにより、金融商品取引業から除外される(定義府令16条1項13号)という途をとることも考えられる。

 9  まとめ

 これまで、特例業務届出者の一部には、届出済みであることがあたかも当局のお墨付きであるかのように謳って、個人投資家を募る業者が見られたところでもあり、改正法によって投資家の範囲が限定されることは、「プロ向けファンドの特例」を悪用した業者による投資被害を防ぐ意味で大きな効果があると考えられる。改正法により、投資経験のない個人等を相手方としたファンドは、登録済みの金融商品取引業のみが取り扱うことができることになるため、「プロ向けファンドの特例」を悪用した業者による投資被害は大幅に減少することが期待される。
 他方、改正法により、特例業務届出者に対しては、上述したように、金融商品取引業者に近い規制が適用されることになるため、特例業務届出者としては、大きな意識変革が必要となる。上記のとおり、特例業務届出者は、改正法令の施行日に向けて帳簿書類、運用報告書や

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本柳 祐介(もとやなぎ・ゆうすけ)

 2001年早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。2010年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、2010年~2011年、米ニューヨークのデービス・ポーク・アンド・ウォードウェル法律事務所勤務、2011年~2012年ドイツ証券株式会社出向、2011年ニューヨーク州弁護士登録。現在西村あさひ法律事務所パートナー。
 資本市場における資金調達、金融商品市場の取引規制、投資ファンドの組成、アセット・マネジメント、金融業関係規制などを担当。

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