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西村あさひのリーガル・アウトルック

FinTechの進展に伴う決済関連規制・金融サービス仲介業規制の行方

谷澤 進(たにざわ・すすむ)

FinTechの進展に伴う決済関連規制・金融サービス仲介業規制の行方

 

西村あさひ法律事務所
谷澤 進

拡大谷澤 進(たにざわ・すすむ)
 2004年、東京大学法学部卒業。2006年に司法修習(第59期)を経て、第一東京弁護士会登録(2013年に再登録)。2012年、ヴァンダービルド大学ロースクール卒業(LL.M in Law & Business Track)。2012年から2013年まで金融機関(在ニューヨーク)に出向。2013年から2014年まで外資系証券会社(東京)に出向。

 1 はじめに

 金融審議会に設置されている「金融制度スタディ・グループ」が2019年7月26日に「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫」(以下「報告書」という。)を公表した(注1)。これは、昨年6月に公表した中間整理(注2)に続き、同スタディ・グループが機能別・横断的な金融規制体系に向けて検討した結果を取りまとめたものであり、特に決済法制及びプラットフォーマーへの対応(金融サービス仲介法制)について具体的な制度設計を検討したものである。なお、これらのテーマは、2019年6月21日に閣議決定された成長戦略実行計画にも取り込まれており、そこでは、決済規制については、2020年の通常国会に必要な法案の提出を図るとされ、金融サービス仲介法制については2019年中を目途に基本的な考え方を取りまとめるとされているところである。

 本稿では、それぞれ、現行規制体系を概観した上で、現行規制が変更される可能性が示された内容を中心に報告書の内容を紹介することとしたい。

 2 資金決済業規制

 (1) 決済関連の現行規制体系の概要

 現在の顧客取引の決済に関連する規制は、何らかの取引の決済として行われるものと、特定の取引とは切り離された資金決済として行われるものとで、規制体系が分かれている。

 後者の特定の取引とは切り離された資金決済として行われるものが「為替取引」であり、これは銀行法上の銀行業に該当し、銀行免許を要する業務とされてきたが、2009年に成立した資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という。)により、1回当たり100万円以下の為替取引を行う業務に限っては、銀行以外でも資金移動業(登録業務)として行うことが可能になっている。

 なお、かかる「為替取引」については法令上の定義はなく、2001年の最高裁決定(注3)において、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされている。かかる定義は、現金(紙幣や貨幣)の輸送を手段とする資金移動が除かれることは明確であるもののその点を除き、少なくとも文理的には、資金移動に関するサービスが幅広く含まれうるし、また、取引の決済として行われる行為が除外されているわけでもなく、規制対象行為の外縁が不明確であることが指摘されてきた。

 次に、取引の決済として行われるものとしては、電子マネーなどのプリペイド式のものについては、資金決済法上の前払式支払手段として第三者型のもの(商品・サービスの提供者以外の者が発行者となって商品・サービスの購入者から資金を事前に受け取り、商品・サービスの提供者に支払うもの)については登録業務となっており、ポストペイ式のものについては、割賦販売法によりクレジットカードの発行者についての登録等の規制がされている。

 また、決済機能を果たしているものとして、収納代行・代金引換等のサービスが存在している。第三者が資金の仲介を行っている点では、上記の2つと異なるところはないが、実務的には代理受領等の法的構成をとって収納代行・代金引換業者が商品・サービスの提供者のために資金を受領した時点で代金債務が消滅するために資金移動の委託を受ける為替取引とは異なるものと考えられており、資金決済法の立法過程でも将来の課題とされ、基本的には決済規制の対象にはならないと捉えられている。

 さらに、周辺的なものとしてポイントサービス(商品・サービスの提供を受けられる権利を無償で付与するもの)が存在し、これは一度付与された後は電子マネーと同様の機能を有することになるが、無対価で発行されるものである以上、基本的には決済規制の対象にはなっていない。

 (2) 資金移動業

 報告書では、銀行以外でも為替取引を行うことができる資金移動業(登録業務)については、実際のニーズを踏まえて、①1回100万円を超える高額送金を取り扱う事業者、②現行通り1回100万円以下の送金を取り扱う事業者、③1回数千円又は数万円の少額送金のみを取り扱う事業者に更に区分し、①については銀行以外にも新規に業務を認め(注4)、③についてはリスクが相対的に小さいことに鑑みた現行の資金移動業規制の緩和を検討することを提案している。

 一方で、従前からの課題と考えられていた利用者資金の滞留や保全等の問題の解消に向けた提案を含んでおり、この点は規制の強化ともいえるため留意が必要である。すなわち、従前から行われてきた具体的な送金指図を伴わない資金の受入れや保持、あるいは、利用者が他者から送金を受けた資金を溜め置くことについては出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)上の預り金規制との関係が問題になりうるところ、現行の資金移動業者についても何らか制限等の対応を検討していく必要があるとされている。

 また、いわゆる無権限取引(利用者の意思に基づかない資金移動サービスの利用がされた場合)の利用者と事業者の責任分担等に関するルールについても実態も踏まえた上で、検討することが適当であるとされている。

 (3) 前払式支払手段

 第三者型前払式支払手段については、幅広い加盟店で利用できる場合には現金資金と同様の価値を有するため、チャージ残高の譲渡や番号等をメール・SNSで送付することが可能であれば、送金サービスに類似した性質を持ちうる一方で、現行規制上、利用者資金の保全については資金移動業と相違があり、未使用残高の50%を保全すれば足りることになっている。

 報告書では、「第三者型」かつ「IC型」や「サーバ型」についてはかかる利用者資金の保全についての規制のギャップについて見直すことを検討するとされており、既存の第三者型前払式支払手段の発行者については規制の強化になりうるため留意が必要である。もっとも、キャッシュレス化の促進の観点も踏まえ、受入れ上限額が数万円以下の場合(注5)には個々の利用者への影響が限定的になることも踏まえて検討することが重要とされている(注6)点は注目される。

 (4) 収納代行・代金引換等

 収納代行・代金引換等にかかる金融規制については、前述のとおり資金決済法の立法過程で将来の課題とされてきたところであるが、報告書は、状況の変化として、「割り勘アプリ」といった形で、「収納代行」の形式をとりつつ、実質的に個人間送金を資金移動業の登録なく行うサービスが登場していることを指摘し、こうした「収納代行」については、資金移動業者が提供する送金サービスと変わりないため、資金決済法上の資金移動業にあたることを明らかにした上で、必要な場合については規制を及ぼすことが考えられるとしている。

 具体的には、債権者が一般消費者である場合には、一般消費者が「収納代行」業者の信用リスクを負担することになり、①上述のような実質的に個人間送金に該当するようなもの」は資金移動業として規制の対象とすることが適当であり、②その他の個人間の「収納代行」については、資金移動業の規制の潜脱と評価されるものについてきめ細かに検討していくことが重要であると指摘している。更に、その際には、とりわけ、いわゆるエスクローサービスのように、例えば、フリマアプリやシェアリングサービスなどにおいて、利用者保護上、重要な役割を果たしているものについては、そのエコシステムに支障が生じることのないよう特に留意すべきとされている(注7)点は注目される。

 (5) ポイントサービス

 報告書は、ポイントサービスについては、現状認識を踏まえて、引き続き金融規制が必要な状況にはないとしている。

 (6) ポストペイサービス

 報告書は、ポストペイサービス(一定期間の送金サービス利用代金を纏めて支払うことを可能とするサービス)については、割賦販売法上の信用購入あっせん業(クレジットカードサービスなど)として行う場合の他に、為替取引(銀行業又は資金移動業)と資金の貸付け(貸金業)を組み合わせて行う方法が存在する旨を指摘した上で、こうした業務については各許認可を前提とした規制が適用されるところ、1件あたり数千円以下の比較的「少額」での利用に限定して、過剰与信防止という規制目的を適切に確保しつつ、リスクに応じた規制の合理化を図ることについて、今後検討することが適当とされ、少額利用に限定した事業について規制緩和を行う可能性を示している。経済産業省の所管である割賦販売法上の信用購入あっせん業の関係でも、同省の産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会の報告書(注8)で同様の方向性が示されている。

 3 金融サービス仲介業規制

 (1) 金融サービス仲介の現行規制体系の概要と報告書の背景

 現行法においては、金融商品・サービスについても製販分離が進む中で、銀行業について銀行代理業(銀行法2条14項、52条の36以下)、金融商品取引業については金融商品仲介業(金融商品取引法2条11項、66条以下)、保険業については保険募集人(保険業法2条23項、275条以下)といった形で、金融機能ごとの主たる規制にぶら下がる形で、仲介行為に関する規制も整備されている。また、これらの仲介業者については、原則として特定の金融機関に所属して、当該金融機関を通じて監督を受ける制度(所属制)が採用されている。

 (2) 報告書の内容

 報告書では、オンラインのプラットフォーマーなどが、金融商品の販売をワンストップで行おうとする場合には、被規制行為(各商品類型)ごとに許認可取得の手続きをとった上で、すべての行為規制を踏まえて業務を行う必要があることになり、また、多数の金融機関が提供する商品を取り扱う場合には、各金融機関からの指導を受けることになり、規制上の負担が不必要に大きくなるという問題意識を踏まえて以下の方向性が示された。

 まず、参入規制(許認可手続き)については、一本化を図る方向性が示され、その上で、行為規制については、実際に行う業務の機能に応じて、必要なルールが過不足なく適用されることが確保されることが重要であるとされた。

 また、所属制についても、緩和の方向性を示しつつ、所属制が、①所属金融機関による指導を通じた仲介業者の適切な業務運営の確保や、②利用者に対する損害賠償資力の確保、などに資するものであることを踏まえて、利用者保護上の措置として、取扱可能な商品・サービスをリスクが相対的に低いものに限定する、利用者資金の受入れを制限する、財務面の規制を強化するといったことが提案されている。

 また、これらの検討に際しては、仲介業者の影響力の方が強いこともありうることや、事業者・利用者のどちらの委託を受けているのかといった法律上の委託関係よりも経済的なインセンティブの影響を強く受けていることを踏まえて仲介業者の法律上の定義や位置づけに過度に捕らわれることなく進めていくべきことが指摘されている。

 4 おわりに

 冒頭に記載のとおり、決済規制については、2020年の通常国会に必要な法案の提出が、金融サービス仲介法制については2019年中を目途に基本的な考え方を取りまとめることがそれぞれ見込まれているため今後の立法動向には引き続き注意が必要である。金融サービスについてイノベーションを促進するためには、民間の新技術の導入や創意工夫を促す必要があり、規制当局においては、理論的な整合性あるいは過去の議論との連続性に過度に拘泥することなく、現在の実態を踏まえて規制の必要性について客観的に検証しつつきめ細かな検討を行った上で、できる限り範囲を明確にした最小限度の規制からスタートし、必要に応じて機動的に規制を調整するという姿勢が望まれる。また、民間の側では、単なる規制のアービトラージではなく、規制趣旨や利用者保護の観点を損なうことなく新技術の活用等により真の意味で利用者の利便性を向上させる創意工夫が求められよう。

 ▽注1: https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190726.html
 ▽注2: 「金融制度スタ

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谷澤 進(たにざわ・すすむ)

 2004年、東京大学法学部卒業。2006年に司法修習(第59期)を経て、第一東京弁護士会登録(2013年に再登録)。2012年、ヴァンダービルド大学ロースクール卒業(LL.M in Law & Business Track)。2012年から2013年まで金融機関(在ニューヨーク)に出向。2013年から2014年まで外資系証券会社(東京)に出向。
 主な共著に『社債ハンドブック』(商事法務、2018年7月)、『新株予約権ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018年3月)、『FinTechビジネスと法 25講- 黎明期の今とこれから - 』(商事法務、 2016年7月)などがある。主な論文に、「金融機関とFinTech関連企業の連携における規制上の留意点」(銀行法務21No.821、2017年11月)などがある。

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